1/ 4
http://www.jcr.co.jp/
17- D- 0173
201 7 年
5 月
2 9 日
総合不動産大手各社の 17/ 3 期決算の
注目点
総合不動産大手各社(野村不動産ホールディングス、東急不動産ホールディングス、三井不動産、三菱地
所、住友不動産の 5 社)の 17/ 3 期決算実績および 18/ 3 期決算見通しを踏まえ、J C R の現況に関する認識と
格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
東京都心部におけるオフィスビル市況は堅調に推移している。三鬼商事によると、東京ビジネス地区(千
代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の平均空室率は、直近である 17 年 4 月末で 3. 39%。12 年 6 月末
の
9. 43%をピークに低下傾向が続いてい る。平均賃料については、 ボトムであった
13
年
12
月末の月額
16, 207 円/ 坪から上昇基調になっており、17 年
4 月末では
18, 774 円/ 坪まで改善している。こうした空室率
の低下や賃料の上昇は、企業のオフィスビル需要が底堅い上、新規供給も少ないことが背景に挙げられる。
「東京
23 区の大規模オフィスビル市場動向調査
2017(森ビル調べ)
」
(17 年
4 月
25 日公表)によると、17
年の供給量は
73 万㎡、前年比
25%減と
2 年連続で減少する見通しとなっている。また、過去実績年平均が
103
万㎡であり、歴史的にみても低水準であることがうかがえる。足元のオフィスビル需要は、業容・人員
拡大などで底堅く推移しており、引き続き需給バランスが悪化する懸念は小さいと考えている。ただ、18 年
以降の供給量の増加による影響は留意が必要である。18
年∼20
年の年平均供給量は
133
万㎡と前述の過去
実績年平均 103 万㎡を大きく上回ると予想されている。各年別にみると、18 年に 140 万㎡と前年比で大きく
増加、19 年に 97 万㎡と一旦減少するものの、20 年には 163 万㎡の見込みである。既存物件の建替えが占め
る割合も大きいとみられ、新規供給面積すべてが純増となるわけではないが、中期的な需給バランスの動向
に注視したい。
首都圏のマンション発売戸数は減少している。16
年の発売戸数(不動産経済研究所調べ)は
3. 57
万戸
(前年比
11. 6%減)と
3
年連続の減少となり、その水準も過去
20
年の中で最低水準となった。地価の上昇
に加え、建築コストの高騰・高止まりなどに伴う販売価格への転嫁が主因とみられる。都心部では売れ行き
が堅調な物件があるものの、埼玉県や千葉県といった郊外を中心に契約率が鈍化している。16 年の初月契約
率は、好調の目安とされる
70%を上回った月が
4
回にとどまった。また、17
年に入ってからも
4
ヵ月連続
で 70%割れの状況である。在庫も増加基調だ。ボトムであった 14 年 8 月末の 3, 426 戸に対し、17 年 4 月末
は
6, 649 戸まで増加しており、今後の動向に留意が必要である。不動産経済研究所では、17 年の首都圏マン
ション発売戸数を
3. 80 万戸(前年比
6.2%増)と
4 年ぶりの増加を予想している。都区部や近郊の大型案件
がけん引し、緩やかに回復するとしているが、引き続き需要はまだら模様に変化はないとみられる。
2. 決算動向
総合不動産大手
5 社合計の
17/ 3 期営業利益は
7, 635 億円(前期比
10. 2%増)と
5 期連続で増益となった
ことに加え、2
期連続で最高益を更新した。事業セグメント別営業利益をみても、主力である不動産賃貸事
業や不動産分譲事業を中心に総じて増益となった。
個別企業でみると、野村不動産ホールディングスを除く
4
社が営業増益を達成した。4
社の中でも、住友
不動産が
4
期連続、三井不動産も
3
期連続で過去最高益を更新した。また、三菱地所については
08/ 3
期以
来の過去最高益更新となった。
一方、財務構成はやや改善した。17/ 3 期末の 5 社の自己資本比率は 28. 0%(前期末 27.5%)
、D/ E
レシオ
は
1. 81
倍(同
1.83
倍)となった。引き続き、純利益蓄積による自己資本の拡充が進み、好調な不動産市況
2/ 4
http://www.jcr.co.jp/
7. 4
兆円と財務バッファーの厚みが一段と増している。一方、オフィスビルなど固定資産への投資拡大を主
因にフリーキャッシュフローは 3 期連続の赤字となり、その結果、有利子負債は 3 期連続で増加した。
個別企業でみると、東急不動産ホールディングス、三菱地所、住友不動産の 3 社は自己資本比率、D/ E
レ
シオがともに改善。野村不動産ホールディングスは自己資本比率、三井不動産は D/ E レシオが改善した。
3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
総合不動産大手
5
社合計の
18/ 3
期売上高は
5. 42
兆円(前期比
5.7%増)
、営業利益は
7, 895
億円(同
3. 4%増)となる見通しである。事業セグメント別営業利益では、引き続き不動産賃貸事業、不動産分譲事業
とも増益を維持する計画となっている。個社別では、17/ 3 期同様に、東急不動産ホールディングス、三井不
動産、三菱地所、住友不動産の 4 社が営業増益となる見通し。住友不動産 5 期連続、三井不動産 4 期連続、
三菱地所
2
期連続で過去最高益を更新する見込みである。一方、野村不動産ホールディングスは住宅事業の
収益悪化を主因とし、2 期連続減益となる計画である。
各社の公表計画数値は、ここ数年間の傾向と大きな変化はない。堅調なオフィスビル需給などを勘案する
と、高水準の収益が継続し、短期的に悪化する懸念も依然として小さいと考えている。一方で、次期以降に
ついては、分譲マンションの契約率低下に加え、オフィスビル供給増による収益への影響などに留意する必
要があろう。
財務構成についても大きく悪化する懸念は小さいとみられる。オフィスビルなどへの新規投資拡大によっ
て、15/ 3 期以降フリーキャッシュフローの赤字が継続しているが、赤字幅は縮小する方向にある。今後も都
市再開発事業などへの投資が計画されているものの、各社とも保守的な財務運営方針を維持しており、財務
構成の大幅な悪化にはつながらない見込みである。
3/ 4
http://www.jcr.co.jp/
(図表 1)総合不動産大手財務データ
(単位:億円、%、倍)野村不動産ホールディングス 東急不動産ホールディングス 三井不動産 (3231) (3289) (8801)
A/ 安定的 A- / 安定的 AA/ 安定的
15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期 (実績) (実績) (実績)(計画) (実績)(実績) (実績) (計画) (実績)(実績) (実績) (計画)
売上高 5, 672 5, 695 5, 696 6, 460 7, 731 8, 155 8, 085 8, 400 15, 290 15, 680 17, 044 17, 900 営業利益 719 809 772 760 633 688 732 735 1, 861 2, 025 2, 326 2, 450 (利益率) 12. 7 14. 2 13. 6 11. 8 8. 2 8. 4 9. 1 8. 8 12. 2 12. 9 13. 6 13. 7 経常利益 637 727 689 670 517 564 636 640 1, 634 1, 825 2, 196 2, 270 (利益率) 11. 2 12. 8 12. 1 10. 4 6. 7 6. 9 7. 9 7. 6 10. 7 11. 6 12. 9 12. 7 当期利益 384 472 470 440 252 287 315 345 1, 002 1, 177 1, 318 1, 400 (利益率) 6. 8 8. 3 8. 3 6. 8 3. 3 3. 5 3. 9 4. 1 6. 6 7. 5 7. 7 7. 8 EBI TDA 883 980 944 885 952 974 2, 516 2, 748 3, 096 (売上比) 15. 6 17. 2 16. 6 11. 4 11. 7 12. 0 16. 5 17. 5 18. 2 営業キャッシュフロー 238 133 ▲318 ▲385 879 689 303 322 2, 274 投資キャッシュフロー ▲325 ▲597 ▲545 ▲1, 003 ▲1, 124 ▲709 ▲2, 616 ▲2, 397 ▲2, 015 フリーキャッシュフロー ▲87 ▲464 ▲863 ▲1, 388 ▲ 245 ▲ 20 ▲2, 313 ▲2, 075 259 財務キャッシュフロー ▲90 536 765 1, 392 ▲ 305 230 2, 215 2, 011 150 総資産 13, 692 14, 854 15, 930 19, 738 19, 844 20, 671 50, 771 53, 743 55, 707 自己資本 3, 941 4, 449 4, 813 3, 953 4, 188 4, 423 18, 719 19, 223 19, 846 有利子負債 6, 178 7, 219 8, 101 11, 343 11, 061 11, 378 19, 893 22, 262 22, 874 有利子負債/ EBI TDA 7. 00 7. 37 8. 58 12. 82 11. 62 11. 68 7. 91 8. 10 7. 39 D/ E レシオ 1. 57 1. 62 1. 68 2. 87 2. 64 2. 57 1. 06 1. 16 1. 15 自己資本比率 28. 8 30. 0 30. 2 20. 0 21. 1 21. 4 36. 9 35. 8 35. 6
三菱地所 住友不動産
(8802) (8830) 5 社合計
AA+p/ 安定的 A+/ 安定的
15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期 18/ 3 期 (実績) (実績) (実績) (計画) (実績) (実績) (実績)(計画) (実績) (実績) (実績) (計画)
売上高 11, 103 10, 094 11, 254 12, 000 8, 068 8, 550 9, 251 9, 500 47, 864 48, 174 51, 330 54, 260 営業利益 1, 563 1, 662 1, 924 1, 950 1, 659 1, 742 1, 881 2, 000 6, 435 6, 926 7, 635 7, 895 (利益率) 14. 1 16. 5 17. 1 16. 3 20. 6 20. 4 20. 3 21. 1 13. 4 14. 4 14. 9 14. 6 経常利益 1, 331 1, 449 1, 698 1, 710 1, 391 1, 484 1, 676 1, 800 5, 510 6, 049 6, 895 7, 090 (利益率) 12. 0 14. 4 15. 1 14. 3 17. 2 17. 4 18. 1 18. 9 11. 5 12. 6 13. 4 13. 1 当期利益 733 834 1, 026 1, 080 806 878 1, 034 1, 150 3, 177 3, 648 4, 163 4, 415 (利益率) 6. 6 8. 3 9. 1 9. 0 10. 0 10. 3 11. 2 12. 1 6. 6 7. 6 8. 1 8. 1 EBI TDA 2, 386 2, 514 2, 788 2, 047 2, 144 2, 343 8, 717 9, 338 10, 145 (売上比) 21. 5 24. 9 24. 8 25. 4 25. 1 25. 3 18. 2 19. 4 19. 8 営業キャッシュフロー 2, 001 1, 358 1, 685 351 961 1, 585 2, 508 3, 653 5, 915 投資キャッシュフロー ▲466 ▲2, 310 ▲3, 272 ▲2, 209 ▲1, 054 ▲2, 741 ▲6, 619 ▲7, 482 ▲9, 282 フリーキャッシュフロー 1, 535 ▲952 ▲1, 587 ▲1, 858 ▲93 ▲1, 156 ▲4, 111 ▲3, 829 ▲3, 367 財務キャッシュフロー ▲1, 891 3, 092 ▲49 1, 878 450 1, 979 3, 504 5, 784 3, 075 総資産 49, 015 53, 118 54, 841 45, 238 46, 759 49, 800 178, 454 188, 318 196, 949 自己資本 14, 958 15, 097 15, 927 8, 475 8, 881 10, 073 50, 046 51, 838 55, 082 有利子負債 19, 294 22, 842 23, 913 30, 857 31, 589 33, 704 87, 565 94, 973 99, 970 有利子負債/ EBI TDA 8. 09 9. 09 8. 58 15. 07 14. 73 14. 38 10. 05 10. 17 9. 85 D/ E レシオ 1. 29 1. 51 1. 50 3. 64 3. 56 3. 35 1. 75 1. 83 1. 81 自己資本比率 30. 5 28. 4 29. 0 18. 7 19. 0 20. 2 28. 0 27. 5 28. 0 (出所)各社決算資料等より J C R 作成
※ 決算予想は各社の公表値
4/ 4
http://www.jcr.co.jp/
【参考】
発行体:野村不動産ホールディングス株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:東急不動産ホールディングス株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
発行体:三井不動産株式会社
長期発行体格付:A A 見通し:安定的
発行体:三菱地所株式会社
長期発行体格付:A A +p 見通し:安定的
発行体:住友不動産株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
■留意事項
本文書に記載された情報は、J C Rが、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、J C Rは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、J C Rは、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。J C R は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、J C Rの格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。J C Rの格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。J C Rの格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、J C Rが保有しています。J C Rの格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、J C R に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NR S R O 登録状況
J C R は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating O rganization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先